「債務整理を受けている状況で、不動産担保ローンは利用できるのだろうか?」
このような疑問をお持ちの方もいるのではないでしょうか。
不動産担保ローンとは、保有している不動産を担保にして、お金を借りられるローン商品です。
また、債務整理は借入金の返済負担を軽減するための手続きで、司法書士や弁護士に依頼して債権者と交渉するケースが多いです。
こちらの記事では、不動産担保ローンと債務整理の関連性などを詳しく解説します。
まずは、不動産担保ローンと債務整理の基本的な情報について解説していきます。
不動産担保ローンは「保有している不動産を担保にお金を借りる」こと、債務整理は「借金の返済負担を軽減する」ことです。
不動産担保ローンとは、金融機関などに不動産を担保として提供し、資金を借りる形式のローンです。
つまり、不動産担保ローンは、建物や土地などの自分が保有している不動産や担保提供して頂ける不動産がある際に利用できます。
不動産が担保になることで金融機関は貸し倒れのリスクをヘッジできることから、不動産担保ローンは無担保ローンに比べて金利が低い特徴があります。
ローンの返済が困難になった場合は、担保として提供した不動産は抵当権や根抵当権を設定している人が競売に出します
競売に出され落札された後に所有権が移るため、不動産担保ローンを利用すると不動産を失う可能性がある点には注意が必要です。
不動産担保ローンを利用する際には、返済計画をしっかりと立ててから契約を結ぶことが重要です。
債務整理とは、借り入れがある状態で返済が難しくなり、借金の減額や返済義務を免除してもらうための手続きです。
債務整理には、下記のように「任意整理」「個人再生」「自己破産」の3つがあります。
任意整理 | 弁護士、司法書士などに債権者との交渉を依頼し、返済利息の軽減や毎月の支払可能額を設定してもらう |
個人再生 | 裁判所を通じて、債務の一定額を返済した上で残りの債務を免除してもらう |
自己破産 | 資力を喪失して債務が払えない状態のときに、債務を免除してもらう |
カードローンやクレジットカードのリボ払いなどの利用をきっかけにして、債務整理の手続きを進めざるを得なくなるケースもあります。
債務整理の手続き中は、多くのケースで不動産担保ローンを利用することは難しいです。
債務整理をしている状態だと、金融機関側としては「返済能力が乏しい」「貸し倒れのリスクがある」と評価するため、審査に通らない可能性が高いためです。
債務整理を行うということは、その状態ですでに「返済能力がない」ことに他なりません。
不動産を担保に取れるとはいえ、返済能力がない人に対して融資を行うのは、債権者としては大きなリスクが伴うでしょう。
しかし、担保として差し出す不動産の価値が高い場合や、当該不動産の住宅ローンなどがすでに完済できている場合は、債務整理中であっても不動産担保ローンを利用できる可能性があります。
また、債務整理の手続きを行った後に一定期間が経過し信用状態を回復させた場合も、不動産担保ローンを利用できる可能性があります。
審査基準は金融機関によって異なるため、利用する前に担当者に相談してみると良いでしょう。
債務整理中であっても、不動産担保ローン利用できるケースはあります。
金融機関によって取り扱いに差があるものの、具体的に不動産担保ローンを利用できたケースを紹介します。
債務整理の中でも、任意整理の場合は不動産担保ローンを利用できる可能性があります。
個人再生は「住宅資金特別条項」が適用できる場合、不動産担保ローンを利用できる可能性があります。
住宅資金特別条項とは、住宅ローンの返済は従来通りを行うという特別条項です。
自己破産の場合、自宅などの不動産は売却の対象となるため、不動産担保ローンを利用できる可能性はほとんどありません。
債権者と司法書士・弁護士の交渉が終わっている場合は、債務整理中でも不動産担保ローンを利用できる可能性があります。
しかし、交渉中に不動産担保ローンを利用して借入額を増やしてしまうと、司法書士や弁護士の仕事を増やしてしまいます。
その結果、債務整理の手続きも中断してしまう可能性があるため、不動産担保ローンを利用する際には必ず司法書士か弁護士に相談しましょう。
債権者と司法書士・弁護士との間で和解が成立した後であれば、不動産担保ローンへの申し込みが可能です。
すでに和解が成立した後に新たに借金が増えたとしても、司法書士・弁護士は関係ないからです。
もちろん、不動産担保ローンの審査に「通過できれば」という条件は付きますが、和解が成立している場合は不動産担保ローンの利用を検討する余地があります。
ただし、債権者との交渉において「新たな借金を禁止する」などの約束がある場合、不動産担保ローンは利用できないため注意しましょう。
債務整理中でも、不動産担保ローンを利用できる可能性があるケースについて紹介しました。
続いて、債務整理中に不動産担保ローン利用するときの注意点について解説します。
債務整理を司法書士や弁護士に依頼したとき、契約内容に新たな借り入れを禁止する旨の文言が契約書に記載されている可能性があります。
「追加融資禁止」などの文言がある場合、不動産担保ローンの審査に通過したとしても、融資を受けることができません。
もし「追加融資禁止」であるにも関わらず新規で不動産担保ローンに申し込むと、契約違反となり、不動産担保ローンの借入金で現在交渉中の借金を完済するように指示されます。
そのため、司法書士や弁護士に債務整理の手続きを依頼したときは、必ず契約書の内容を確認しましょう。
債務整理中に不動産担保ローンを活用して追加融資を受けた場合、他の借入先に追加融資を受けた旨がバレてしまう可能性があります。
金融機関や消費者金融などは、信用情報機関に照会すれば各種ローンの利用状況や返済状況を簡単に確認できるためです。
債務整理中の借入先に追加融資を受けたことがバレた場合、新しく融資を受けた分で借入金の返済をするように求められる可能性があります。
もし不安がある場合は、依頼している司法書士や弁護に相談しておくと良いでしょう。
不動産担保ローンは無担保ローンと比較すると金利が低いものの、毎月きちんと返済することが求められます。
不動産担保ローンで新たにお金を借り入れる場合は、適用される金利をきちんと確認しましょう。
債務整理を行うということは「返済能力が十分ではない状況である」という現実を、自分自身できちんと認識する必要があります。
借り入れる金額と不動産担保ローンの金利を参考に、毎月の返済額をシミュレーションすることが大切です。
不動産担保ローンで借り入れをする際には、返済計画をきちんと立てることが大切です。
毎月の収入と生活費、ローン返済額を鑑みてシミュレーションを行いましょう。
きちんと返済シミュレーションを行うことで、「毎月の生活費は〇円に抑える必要がある」などの全体像を把握できます。
何度も債務整理を繰り返すと自分の信用情報に傷がついてしまいますから、きちんと返済計画を立てて信用情報を回復させましょう。
先に不動産担保ローンの契約を行い、その後に経済状況が変化して返済が難しくなったときでも、債務整理を行うことは可能です。
しかし、任意整理は借金を分割して可能な範囲で返済を行うようにする手続きです。そのため、不動産担保ローンがある場合は債権者から「担保不動産を競売にかければいい」と主張される可能性もあります。
このように、不動産担保ローンを契約した後だと、債務整理が難しくなってしまう可能性がある点には注意が必要です。
なお、不動産担保ローンがあるときの債務整理方法としては、下記のいずれかになります。
どの選択肢がベストになるかは、個々人の状況によって異なります。
そのため、司法書士や弁護士に相談して、各方法のメリットとデメリットを比較検討することが重要です。
続いて、不動産担保ローンのメリットについて解説していきます。
不動産担保ローンには一般的な銀行融資やカードローンとは異なるメリットがあるため、以下で確認していきましょう。
不動産担保ローンでは不動産を担保として差し出すため、無担保ローンと比べると低金利でお金を借りられます。
金融機関側としては、不動産が担保として差し出されることで貸し倒れのリスクを軽減できます。リスクを軽減できれば低金利での融資が可能になるため、不動産担保ローンは低金利で利用できるのです。
不動産担保ローンを契約すると物件の抵当権が付きますが、返済が終われば抵当権を抹消することができます。
担保として提供する不動産の価値にも左右されますが、不動産担保ローンでは高額な融資を受けることも可能です。
金融機関によっては1億円以上の融資にも対応しているところもあるため、さまざまな資金ニーズに対応しています。
不動産の価値は、立地や土地形状、建物の築年数などを総合的に鑑みて金融機関が査定します。
査定金額が高ければ高額な融資を受けることも可能なので、不動産担保ローンは大規模な資金調達を行いたいときに活用しやすいでしょう。
不動産担保ローンは、一般的に長期間の返済期間になります。
また、先述したように低金利でお金を借りることができるため、毎月の返済負担が軽いメリットがあります。
ただし、返済期間を長くすると返済総額は高くなってしまうため、頃合いを見て繰り上げ返済などを行うことが大切です。
不動産担保ローンの対象となるのは、一定の条件を満たした居住用の建物や土地だけでなく、事務所なども含まれます。
また、一定の条件を満たした居住用の不動産は居住中でも賃貸中でも担保の対象となるため、さまざまな用途で使っていても問題ありません。
また、マンションやアパートを保有している場合は「部屋単位」でも「一棟」でも対応可能なので、使い勝手に優れています。
住宅ローンが残っている不動産でも融資可能な場合が多いです。ただし、住宅ローンの残高が不動産購入価格の約6割以下(目安)であることが条件である場合があります。
金融機関によっては、本人が所有する不動産だけでなく家族が所有している不動産も担保の対象として認めているため、資金ニーズが発生したときは家族でも相談してみると良いでしょう。
不動産担保ローンは無目的ローンなので、借りたお金の使途は自由です。
事業用に供しても生活費にしても問題ないため、さまざまな資金ニーズに対応できるメリットがあります。
目的別ローンだと調達したお金の用途が制限されてしまいますが、不動産担保ローンであれば使いたい用途で自由に使うことができます。
不動産担保ローンでは不動産が担保となるため、別途で保証人を用意する必要はありません。
個人の場合は保証人を用意できないケースもありますが、保証人を用意できなかったとしても、不動産担保ローンは利用できます。
また、金融機関によっては保証会社へ保証を委託するケースもあるため、保証人を探す手間を省略できる点は大きなメリットです。
不動産担保ローンには多くのメリットがありますが、デメリットも存在します。
契約前に、メリットだけでなくデメリットについてもきちんと把握しておきましょう。
不動産担保ローンには、不動産を手放す可能性があるリスクがあります。
担保として不動産を提供することになるため、もし返済が滞ると担保として提供した不動産は金融機関により競売されます。
もし自宅不動産を担保として提供した場合、住居を失ってしまうリスクがある点は不動産担保ローンのデメリットと言えるでしょう。
そのため、不動産担保ローンを契約する際には、きちんと返済計画を立ててシミュレーションすることが大切です。
不動産担保ローンは、契約にあたって印紙税や登記費用などの諸費用が発生します。
契約に関する諸費用だけで10万円以上かかるケースもあることから、無担保ローンなどと比較してコストがかかる点はデメリットと言えるでしょう。
さらに、金融機関によって他にも手数料が必要となるケースもあるため、契約時のコストに関してもきちんと認識することが大切です。
融資金額と不動産の価値はイコールではない
担保として提供する不動産の価値は、市場価格をベースにしながら金融機関が決定します。
一般的に、金融機関は担保となる不動産の市場価格に一定の比率(70%など)を乗じて、担保評価額を算出します。
そのため、不動産担保ローンで調達できる金額は、不動産の市場価格よりも低くなる点は知っておきましょう。
不動産担保ローンは、本人の返済能力や信用状況などの審査に加えて、不動産の価値を査定する必要があります。
そのため、無担保ローンなどと比較すると、不動産担保ローンは申し込みから融資までに時間がかかる点は押さえておきましょう。
審査に加えて抵当権の設定などの諸手続きにも時間がかかるため、実際に融資を受けられるまでに1週間程度の時間がかかります。
債務整理をした状態でも、不動産担保ローンを利用できる可能性はあります。
金融機関によって審査基準は異なるため、もし担保として提供できる不動産がある場合は、不動産担保ローンの利用を検討すると良いでしょう。
また、債務整理の手続きに支障をきたさないためにも、司法書士や弁護士に相談することも大切です。