
「不動産売却には、どのくらいの税金がかかる?」
「税金が高額にならないか不安」
不動産を売却する際に、税金が高額にならないか不安を抱えている方も多いでしょう。
そこで本記事では、不動産の売却時にかかる税金や計算方法、控除・特例を紹介します。
不動産にかかる税金を理解して、出費に悩まずに売却を進められるようになりましょう。
不動産売却時には、不動産会社に支払う仲介手数料だけでなく、税金もかかります。
本項では、不動産売却にかかる税金と利益発生時にかかる税金を紹介します。
不動産の売却時には、以下3点の税金がかかります。
税金 | 内容 |
---|---|
印紙税 | 契約書などの文書作成時に、印紙税法に基づき課税される税金 |
登録免許税 | 不動産を購入する際に、所有権保存登記や移転登記、抵当権抹消などをする際にかかる税金 |
不動産会社に支払う 仲介手数料の消費税 |
不動産会社が行う営業活動や手続きなどに支払う仲介手数料にかかる消費税 |
参考:e-Gov法令検索「印紙税法」
法務局「登録免許税の計算 売却、相続などによる所有権の移転の登記」
印紙税は、不動産の売却契約書などの課税文書にかかる税金です。書面に収入印紙を貼り、消印することで納税したとみなされます。
登録免許税とは、不動産の登記を申請する時にかかる税金を指します。所有権移転登記は買主が負担し、住所の変更登記と抵当権抹消登記は売主が支払うことが一般的です。納税は、司法書士が法務局に代理で納税する場合が多いです。
法務局によると、令和8年3月31日までは、土地の売買による所有権の移転登記の場合、登録免許税は固定資産税評価額の1.5%になります。
また、不動産会社と仲介契約を結び、仲介手数料を支払う際には消費税がかかります。
不動産を売却した際に利益が発生すると、所得税や住民税、復興特別所得税がかかります。
基本的には、売却した際に利益が出ると課税されます。
次項の「譲渡所得税(所得税・住民税)の計算方法」にて、計算方法を詳しく解説しますので参考にしてください。
不動産の売却においては、多額の税金がかかる場合があります。
実際に不動産を売却する前に、「どのくらいになるのか」を確認しておきましょう。
本項では、譲渡所得税(所得税・住民税)の税金の計算方法と3,000万円特別控除を利用した際の計算方法を例を挙げながら解説します。
譲渡所得にかかる税金は、不動産の所有年数で税率が変わります。所有年数による税率の違いを以下の表にまとめました。
5年以下(短期譲渡所得) | 5年超(長期譲渡所得) | |
---|---|---|
所得税 | 30.63% | 15.315% |
住民税 | 9% | 5% |
※所得税には、復興特別所得税として所得税の2.1%相当が含まれています。
出典:国税庁「土地や建物を売ったとき」
売却する不動産の税率がわかったら、譲渡所得を把握しましょう。以下の計算式で求めます。
譲渡所得=譲渡収入金額(※1)-(取得費(※2)+譲渡費(※3)) |
※1 不動産の売却額
※2 売却した不動産の購入費用
※3 仲介手数料など
譲渡所得を把握したら、譲渡所得に対して税率をかけてください。例えば、所有年数が5年以上になるなら、所得税は15.315%、住民税は5%になります。
譲渡所得が1,000万円の場合、所得税と住民税を含めた譲渡所得税は以下のとおりです。
1,000万円(譲渡所得)×20.315%(所得税、住民税)=2,031,500円(譲渡所得税) |
このように譲渡所得税を求められるので、不動産を売却する前に計算しておきましょう。
「3,000万円の特別控除」とは、マイホームを売却した時に、譲渡所得から3,000万円を控除(課税の対象となる所得金額を減らすこと)できる特例です。以下の計算式で求められます。
譲渡所得=譲渡価額-取得費-譲渡費用-3,000万円 |
例えば、譲渡所得が4,000万円、取得費が1,000万円、譲渡費用が200万円の場合、3,000万円の特別控除を適用すれば、譲渡所得は以下のようになります。
4,000万円-1,000万円-200万円-3,000万円= -200万円 |
この場合、譲渡所得は−200万円になるので、税金はかかりません。
3,000万円の特別控除については、後述する「不動産売却にかかる税金の控除・特例」で詳しく解説します。
不動産売却時の税金は、種類によって支払うべき時期が異なります。それぞれの税金を支払うタイミングを以下の表にまとめました。
税金 | 支払うタイミング |
---|---|
印紙税 | 売却契約を締結した時 |
登録免許税 | 登記が完了する前(変更登記) 決算・引き渡しの日(抵当権抹消)など、登記申請をした時 |
所得税 | 不動産を売却した翌年の2月16日~3月15日 |
住民税 | 不動産を売却した翌年の6月以降 |
印紙税は、収入印紙を貼り忘れたり消印をしなかったりすると、過怠税を課される場合があるため、注意してください。
なお、登記内容に変更がない場合、抵当権が設定されていない時、すでに抵当権抹消登記が行われている際には、登録免許税は発生しません。
上記の表を参考に、不動産売却時の税金を支払うようにしましょう。
不動産の売却時における税金の納付方法も種類によって異なります。以下の表にまとめました。
税金 | 納付方法 |
---|---|
印紙税 | 収入印紙を課税文書に貼りつけ納付 |
登録免許税 | 原則現金での納付(3万円以下である場合、収入印紙を申請書に張り付けて提出可能) |
所得税 | 確定申告を行い、金融機関や税務署にて納付(キャッシュレス決済も可能) |
住民税 | 普通徴収と特別徴収のいずれかを選んで納付 |
登録免許税は原則現金での納付が必要ですが、オンラインで申請を行った場合、電子納付も可能です。
印紙税は、収入印紙を課税文書に貼り付けて消印することにより納付します。
所得税は、売却した翌年に確定申告を行い確定したら、3月15日までに振り込みを行います。金融機関や税務署での振り込みが可能です。
住民税は、不動産を売却した翌年の6月以降の納付が必要です。特別徴収(住民税を勤め先の給与から引く方法)または普通徴収(自ら納付書によって納税する方法)のいずれかを選んで納めます。
住民税の納付書には納入期限があり、6月、8月、10月、翌年の1月の4回もしくは一括でまとめて支払う方法(普通徴収)があります。
また、給与所得者の場合は、特別徴収(毎月給与から天引きされ、会社が支払う形で納める方法)により、住民税を支払います。
本項では、不動産売却にかかる税金の控除や特例を紹介します。
3,000万円特別控除とは、マイホーム(居住用財産)を所有していた時に、所有期間の長さに関係なく、譲渡所得から最高3,000万円まで控除が受けられる特例です。
短期譲渡所得と長期譲渡所得に関係なく適用できます。
国税庁の「マイホームを売ったときの特例」によると、3,000万円特別控除を受けるには以下のような条件が必要です。
• 自分が住んでいる家屋や敷地、借地権を売ること
• 以前に住んでいた家屋や敷地は、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却すること
• 家屋を取り壊してから譲渡契約を締結した日まで、その敷地を貸駐車場などそのほかの用に供していないこと
• 売った相手が親子や夫婦など近親者でないこと
注意点として、自動的に3,000万円の特別控除が適用されるわけではないので、確定申告を忘れないようにしてください。
10年超所有軽減税率の特例とは、自分が住んでいたマイホームを売却した際に、一定の要件で、長期譲渡所得の税額よりもさらに低い税率で計算する特例です。
家屋が取り壊された年の1月1日時点で所有期間が10年を超えている場合などに適用されます。
具体的な税率は以下のとおりです。
課税長期譲渡所得金額 | 所得税 | 住民税 |
---|---|---|
6,000万円以下 | 10.21% | 4% |
6,000万円超 | 15.315% | 5% |
※所得税には、復興特別所得税として所得税の2.1%相当が含まれています。
このように、長期間住宅を所有していた方が利用できるため「売却予定の不動産が対象になるのか」を確認してみましょう。
居住用財産の買換え特例とは、住んでいたマイホームを売却して、ほかの住宅に買い換えた場合、買換資産を将来譲渡する時まで課税を延長できる特例です。
譲渡益の控除や非課税などの恩恵を受けられませんが「住宅売却の際に費用がかかってしまう」という際に活用できます。
国土交通省の「令和6年度国土交通省税制改正概要」によると、居住用財産の買換え特例は、令和5年12月30日までの予定でしたが、令和6年1月1日から令和7年12月31日まで延長されたと明記されています。
これからマイホームを買い換えする予定のある方は、利用を検討してみてください。
不動産売却においては、税金面や事務処理などで悩む場合があります。
そこで本項では、不動産売却に関する相談先を紹介します。
土地の売却相談は、不動産会社にしましょう。
不動産の売却は高額になるケースが多いので「いくらになるのか」といった点を相談できます。
さらに、不動産価格の査定だけでなく、以下のような対応も行ってくれます。
• 広告宣伝活動
• 売却活動
• 売買契約書の作成
• 物件の引き渡し
上記の営業活動や手続きを個人で行うと多くの手間がかかるため、不動産会社への依頼をおすすめします。
どのような不動産会社を選べば良いか分からない方は、一括査定・売却サイトを利用しましょう。
不動産のおおよその売却価格を知れて、最適な不動産会社を紹介してくれます。
また、不動産会社の仲介手数料が気になる方は、次回、下記の記事を作成しますので参考にしてみてください。
「不動産売却にかかる仲介手数料とは?相場や計算方法、安くする方法を解説」(R7.9月末UP予定)
不動産の売却の際に、売却益が出ると税金が発生するため、税理士に相談しましょう。
不動産の売却で利益が出た際には、確定申告をする必要があるので、税理士に相談すればスムーズに進められます。
特に、譲渡所得の計算は、煩雑であり間違いが発生する可能性もあります。計算を間違えて、支払いに悩まないためにも税理士に依頼しましょう。
さらに、特別控除や特例を利用できるかどうかまで見極めてくれます。
税理士に依頼する際の相場は一般的に10〜20万円程度ですが、税理士事務所や譲渡所得の金額によって変動するため注意してください。
隣地との境界が確定していない場合には、土地家屋調査士に境界の確定と測量図面の作成を行ってもらう必要があります。
特に、高額の土地になると、少しの計算間違いが多額の価格差になる可能性があり、トラブルを避けるためにも土地家屋調査士を利用することをおすすめします。
土地家屋調査士に依頼する際の相場は、隣地との境界が確定していない場合にお願いする確定測量の場合で 40〜50万円程度です。
土地の面積や形状、地域性などによっても価格は変動するので、見積もりをもらって検討してください。
不動産売却においては、登録免許税や印紙税、譲渡所得税などの税金がかかります。
税金を支払う時には、3,000万円の特別控除や10年超所有軽減税率の特例、居住用財産の買換え特例などの制度があるので活用してください。
一方で、不動産売却においては、多額の税金が発生する場合があり、現金の調達に頭を悩ませる方もいるでしょう。
そのような場合は、売却予定の不動産を担保にして、売却完了までの間に必要な資金を借入できる「不動産売却つなぎローン」の利用をおすすめします。
売却前に資金を調達できるので、不動産の売却を売り急ぐ必要がありません。
不動産売却にかかる税金や仲介手数料を資金調達したい方は、ご検討ください。