「不動産担保ローンを利用すると、いくら借りられるんだろう?」という疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
不動産担保ローンとは、自分が保有している不動産を担保とし、金融機関や貸金業者から融資を受ける方法です。不動産の価値次第では多額の融資を受けることができ、調達したお金の用途は自由なので、多くの人から利用されています。
こちらの記事では、不動産担保ローンではいくら借りられるのかを解説していきます。
不動産担保ローンの利用を検討しており、いくら借りられるのか知りたいという方に役立つ内容となっているので、ぜひ最後までご覧ください。
不動産担保ローンとは、所有している土地や建物を担保とし、お金を借りる方法です。
キャッシングやカードローンでは、申込者自身の返済能力や信用情報が重点的にチェックされますが、不動産担保ローンでは「担保となる不動産の評価」も重視されます。
不動産担保ローンでは、お金を借りた人(債務者)が返済不能に陥ったとき、お金を貸した側(債権者)は担保となっている不動産を競売にかけて債務を回収する点が特徴です。
不動産担保ローンは担保を提供する性質がある関係で、下記のようなメリットがあります。
不動産担保ローンでは担保する土地や建物がある分、債権者の債務回収リスクが軽減されます。そのため、一般的なカードローンよりも低い金利で融資を受けられるメリットがあります。
また、不動産担保ローンは担保となる不動産の価値や申込者の返済能力を加味して融資額が決定するため、1億円以上など多額の資金を受けることも可能です。
不動産担保ローンでいくら借りられるかは、金融機関や貸金業者によって異なります。
しかし、多くの業者で不動産評価額の計算方法は共通しているため、不動産担保ローンでいくら借りられるか概ねのイメージをつかむことが可能です。
以下で、不動産担保ローンでいくら借りられるのか、どのように不動産が評価されるのかを解説します。
一般的に、借入可能額は「不動産の担保評価額の60~80%」が目安です。具体的にいくら借りられるかは、不動産の価値に大きく左右されます。
なお、不動産の担保評価額は下記の計算式で算出されます。
担保評価額=不動産評価額×担保掛目
不動産評価額は「実勢価格(時価)」「相続税路線価」などいくつかの種類があり、どの数値を採用するかは金融機関・貸金業者によって異なります。
また、担保掛目も金融機関・貸金業者によって異なりますが、担保掛目は「60~80%程度」に設定されるのが一般的です。
例えば、不動産評価額が3,000万円の不動産を担保として提供する場合、借入可能額は1,800万円~2,400万円程度となるでしょう。
なお、築年数が古い物件や空き家など競売にかけたとしても売れる見込みが低い不動産に関しては、担保評価額がゼロ円になることもあります。
不動産は「一物多価」と言われることもあり、不動産の価額には大きく4つの種類があります。
実勢価格(時価) | 実際に赤の他人同士で不動産が取引される価格 |
公示価格(実勢価格に近い) | 全国の標準的な土地に設定された1平方メートル当たりの単価で、国土交通省が毎年算定する価額 |
固定資産税評価額(実勢価格の7割程度) | 市区町村が設定する、固定資産税の指標となる価額 |
路線価(実勢価格の8割程度) | 相続税を算定する際の基準となる価額 |
実勢価格は、赤の他人同士で売買されたときに決定する価額で、いわゆる時価です。買主次第で売買される金額が変動するため、実勢価格も一律ではありません。
固定資産税評価額は、市区町村が固定資産税を算定するために3年に1度算出する価額です。路線価は、土地の相続税を評価するために国税庁が算定する価額です。
不動産担保ローンでは不動産の担保評価額を参考にして、融資する金額を決定します。不動産の担保評価額は金融機関や貸金業者によって異なりますが、以下のように算出されるケースが多いです。
路線価は実勢価格の7割~8割程度になっていることから、不動産の担保評価額は実勢価格の約半額程度になることも少なくありません。
つまり、債権者側は債権回収リスクをヘッジするために「保守的に」不動産評価を行っていることになります。実勢価格をベースに融資額をイメージしていると、「想像以上に金額が低かった」となりかねないため、注意しましょう。
ただし、不動産評価の算定基準や方法は金融機関や貸金業者によって異なるため、複数の業者で見積もってもらうことをおすすめします。複数の業者で見積もりを取り、比較検討することが大切です。
不動産担保ローンでいくら借りられるかは、不動産評価額が大きく影響します。
しかし、ローン申込者の属性も融資額に影響を与える点は押さえておきましょう。
上記のように、不動産以外に申込者本人の情報も加味されます。
例えば、過去の支払遅延や延滞などを起こしている履歴があると「返済能力に疑問がある」「信用能力が乏しい」と判断され、融資額が低くなってしまう可能性があります。
不動産の評価が高くても、申込者に問題がある場合は融資額が低くなる恐れがある点に留意しましょう。
多くの金融機関や貸金業者が不動産担保ローンを取り扱っているため、不動産担保ローンを選ぶときには比較検討することが欠かせません。
以下で、不動産担保ローンを選ぶときに注目するべきポイントを解説します。
金融機関・貸金業者ごとに、設けている融資上限額には差があります。
大手金融機関では数億円の融資が可能な一方で、貸金業者の中には数千万円を上限としているところもあります。
融資を希望している金額によって、どの業者に不動産担保ローンを申し込むべきか変わってくるため、きちんと融資上限額を確認することは大切です。
不動産担保ローンで融資を受けると、利息をつけて返済しなければなりません。
不動産担保ローンは、不動産を担保として提供するためカードローンよりも金利が低いメリットがありますが、きちんと複数の業者の金利を比較検討しましょう。
一般的に、金融機関は低い金利を設定しているケースが多い一方で、貸金業者などのノンバンク系の不動産担保ローンは金利が高い傾向にあります。
また、融資の金額が小さいケースや申込者の情報に問題があり「リスクが高い」と判断されるケースでは、金利は高く設定されます。
金融機関や貸金業者によって、借りやすさや融資スピードが異なります。また、不動産担保ローンでは、担保となる不動産の価値をきちんと見極める必要があることから、現地調査などが行われる点が特徴です。
一般的に、金融機関は低い金利を設定している一方で、審査が厳しいうえに審査スピードもやや遅いです。
貸金業者は金利が高い一方で、審査を柔軟に行っており、融資スピードも早い傾向にあります。
貸金業者の中には、申し込みをした即日で審査結果がわかり、申し込みから数日~1週間程度で融資を受けられるケースもあるため、スピード重視の方におすすめです。
不動産担保ローンでは、担保として提供した不動産に抵当権を設定する必要があることから、登記手数料などの費用が発生します。
また、融資の手続きを進めるにあたって事務手数料を負担する必要があり、金融機関や貸金業者によって異なります。
一般的に、不動産担保ローンで必要となる事務手数料の目安は「融資金額の3%程度」です。
ほかにも、繰り上げ返済を行うときの「繰り上げ返済手数料」も金融機関や貸金業者によって異なるため、諸費用はきちんと確認することが大切です。
不動産担保ローンは、自分名義の不動産だけではなく、家族名義の不動産や同意を得られれば他人名義の不動産も担保として提供できるケースがあります。
金融機関や貸金業者ごとに取り扱いが異なり、また不動産の所有者が不動産担保ローンの契約に同意する必要がある点には留意が必要です。
家族・親族名義等の不動産を担保にできれば、不動産担保ローンを利用する幅が大きく広がります。そのため、金融機関や貸金業者ごとに、担保として提供できる不動産の範囲を確認することも大切です。
不動産担保ローンを提供している金融機関・貸金業者は多くありますが、信頼性を確認することも重要です。
営業年数や不動産担保ローンの取扱件数などの実績を見れば、信頼性の高さを概ね把握できるでしょう。
また、不動産担保ローンの取り扱い実績が豊富な業者であれば審査や手続きをスムーズに進めてくれるため、融資を受けられるまでが早いメリットも期待できるでしょう。
動産担保ローンの審査の厳しさや柔軟性は業者によって異なるため、サービス面に関しても確認しましょう。
例えば、金融機関は第二抵当以下では申し込みを受けないケースがほとんどですが、貸金業者の中には第二抵当以下でも利用できるケースがあります。
一般的に、金融機関よりもノンバンク系の貸金業者のほうが、柔軟に審査を進めてくれる傾向にあります。
ホームページなどを確認して、どのように審査を行っているのか、柔軟に対応してくれそうか確認しておきましょう。
不動産担保ローン以外にも、不動産を活用して資金を調達する方法があります。
もし不動産担保ローンの審査に通過できなかった場合は、以下で紹介する手段の活用も検討してみてください。
リバースモーゲージとは、自分が保有している不動産を担保にお金を借り入れ、自分が死亡した後に不動産を売却して弁済する方法です。
不動産を担保にして融資を受ける点は不動産担保ローンと同じですが、返済するタイミングが「生前」か「死後」かの差があります。
また、リバースモーゲージを利用すると、生きている間の返済は利息のみで済むため生活を経済的に圧迫するリスクも低いでしょう。
住み慣れた自宅で生活をつづけながら生活資金を工面できる点は、リバースモーゲージの大きなメリットです。
契約者が亡くなった後も、配偶者が契約を引き継げるケースが多いため、もし契約者が亡くなっても配偶者が住居を失うことはありません。
リバースモーゲージを利用すると、金利変動に伴って返済額が上下する点と、担保として提供した不動産を相続人に相続させることができなくなる点には注意しましょう。
リースバックとは、自分が住んでいる不動産を売却した後に、そのまま同じ不動産に賃貸暮らしで住み続ける方法です。
リースバックでは自宅を「売却」するため、返済するという概念がありません。代わりに、住み続ける家賃を支払う必要があるため、売却資金と支払う家賃のバランスを考えることが大切です。
リバースモーゲージや不動産担保ローンとは異なり生前に不動産の所有権を失ってしまうデメリットがありますが、まとまったお金を用意でき、住み慣れた自宅に住み続けることができるメリットがあります。
まとまったお金を工面したい希望があり、不動産の所有権を手放しても問題ない場合、リースバックを検討すると良いでしょう。
例えば、将来的に老人ホームを利用する考えがある場合や地方に移住する計画があるケースにおいて、リースバックが有力な選択肢となります。
また、リースバックを活用すれば相続対策を行うこともできます。
保有している財産の大半が不動産の場合、遺産分割をめぐって相続人同士が争うケースは多く、また相続税は原則として現金で納付する必要があります。
生前に不動産を売却して現金化すれば、相続人で分けやすくなるうえに相続税を納めるための現金も用意できるため、相続手続きがスムーズに進むでしょう。
不動産担保ローンでいくら借りられるかの目安は、「不動産の担保評価額の60~80%」です。
不動産の担保評価額や申込者の信用情報によって融資額が決定するため、不動産の価値だけを気にするのではなく、自分自身の信用情報を守ることも重要です。
不動産の担保評価額は「不動産評価額×担保掛目」で決まりますが、不動産評価額の指標や担保掛目は、金融機関や貸金業者によって異なります。
自分にとって最適な不動産担保ローンを活用し、希望の金額を借り入れるためにも、複数の業者を比較検討しましょう。